発表年:大正3年(1914年)
作詞:作者不詳
作曲:作者不詳
初出:『尋常小学唱歌 第六学年用』
「卒業の歌」は、大正3年(1914年)に発表された文部省唱歌です。『尋常小学唱歌 第六学年用』に収録され、歌い出しの「うれし、うれしや、うれしやな」という印象的な言葉から、かつての小学校の卒業式で歌われた唱歌として知られています。
作詞者・作曲者は、ともに作者不詳とされています。この時代の文部省唱歌には、個人の作家名を前面に出さず、文部省の編集によって学校教育のために作られた作品が多くありました。
歌の内容は、六年間の学校生活を終え、無事に卒業を迎えた喜びを歌ったものです。第一節では、六年間の「学びの道」を終えた喜びと、春を迎えて美しく彩られた野山の情景が描かれています。
続く歌詞では、入学したころには何も分からなかった子どもが、六年間の学びを通して文字や世の中の道理を身につけたことを振り返ります。そして特に大きく取り上げられているのが、長い年月にわたって教えてくれた師(教師)への感謝です。
最後には、教師から授かった知識や徳をこれからの人生の「舵」や「しをり(道しるべ)」として、さらに高い学びを目指して進んでいこうという決意が歌われます。そして「師の君さらば、我が友さらば」と、恩師や友人との別れを惜しみながら、未来へ旅立っていく姿で締めくくられます。
現在の卒業式で歌われる歌と比べると、明治・大正期の学校教育を反映した表現が多く見られます。「卒業を喜ぶ歌」であると同時に、六年間の学びを振り返り、恩師への感謝を胸に新しい人生へ進む門出の歌ともいえるでしょう。
卒業の歌
卒業の歌 文部省唱歌
1
うれしうれしや うれしやな
人の子どもの おしなべて
ふむを御国(みくに)のおきてなる
学びの道の六年(むとせ)をば
卒(お)えし今日こそうれしけれ
柳桜(やなぎさくら)の春匂う
錦をそえて 野も山も
2
うれしうれしや うれしやな
いろはのいをも わきまえぬ
身のいつしかに 積得たる
西も東も 知らざりし
身のいつしかに 分け得たる
世の人並の 文字の数
世の人並の 道の筋(すじ)
3
うれしうれしや うれしやな
六年の月日 手を取りて
教え給いし 師の君の
導きなくば いかで我が
心に開く 智は徳は
思えばうれし 師の情け
思えばうれし 師の恵み
4
うれしうれしや うれしやな
師の賜(たまもの)の 智を徳を
かじにしおりに 世の海を
わたりて行かん なお高き
学びの高嶺 攀(よ)じて見ん
師の君さらば 健やかに
我が友さらば 健やかに

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