作詞:北原白秋(きたはら はくしゅう)
作曲:中山晋平(なかやま しんぺい)
発表年:1929年(昭和4年)
「あの頃」は、詩人・北原白秋の詞に、中山晋平が曲をつけた作品です。1929年(昭和4年)に刊行された『作曲白秋民謡集』に収められました。資料では、この作品について「少女のために作つたもの」とされており、少女たちの思い出や人生の変化を描いた歌として位置づけられています。
歌詞は「辛夷の花の咲く蔭で」という情景から始まり、少女たちが編み物をしたり、刺繍をしたり、童話を読んだりして過ごした「あの頃」を描きます。しかし、辛夷の花が散る頃になると、一人は嫁ぎ、一人は教師となり、また一人は田舎で亡くなるというように、それぞれ異なる人生を歩んでいきます。
そして最後には、再び辛夷の花が咲く頃を迎え、「みんなが笑って」「みんなが歌って」「みんなが夢見ていた」昔の日々が回想されます。春に咲く辛夷の花が、少女時代の明るさと、その後に訪れる人生の別れや変化を象徴しているのが、この歌の大きな特徴です。
北原白秋は、童謡や民謡の創作でも大きな足跡を残した詩人で、中山晋平は白秋の詩に数多くの曲をつけました。「あの頃」もその組み合わせによる作品の一つで、華やかさだけでなく、過ぎ去った青春への郷愁(きょうしゅう=昔を懐かしく思う気持ち)が静かに感じられる歌です。
現在では広く知られた童謡・唱歌とは趣の異なる作品ですが、辛夷の花を人生の季節に重ね、少女たちの青春と別れを描いた北原白秋らしい作品として味わうことができます。
1974年発売で約30万枚のヒットとなった「コント55号」の坂上二郎さんが歌った「学校の先生」を思い出していました、あの歌と内容も雰囲気も似ています。
あの頃(北原白秋)
歌
演奏
あの頃 作詞:北原 白秋/作曲:中山 晋平
辛夷の花の咲く蔭で
一人は編物してました
一人は刺繍をしてました
誰かは童話を読みました
辛夷の花の散る頃に
一人はお嫁にゆきました
一人は教師になりました
誰かは田舎で死にました
辛夷の花のさく頃は
みんなが笑って居りました
みんなが歌って居りました
みんなが夢見て居りました


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