「早春賦」は、作詞・吉丸一昌、作曲・中田章による日本を代表する唱歌です。1913年(大正2年)に刊行された『新作唱歌 第5集』に収められ、広く知られるようになりました。国立国会図書館でも、吉丸一昌作詞・中田章作曲の唱歌として確認できます。
歌詞は、春の気配が感じられる一方で、まだ厳しい寒さが残る早春の情景を描いています。「春は名のみ」と表現されるように、暦の上では春を迎えても、自然はまだ冬の名残をとどめています。そのため、春を待ち望む人々の心と、移り変わる季節の微妙な情感が美しく表現されています。
中田章による旋律は、穏やかで伸びやかな美しさを持ち、歌詞の情景とよく調和しています。どこか物寂しさを感じさせながらも、これから訪れる暖かな春への期待を感じさせるところが、この歌の大きな魅力です。
「早春賦」は、単に春の喜びを歌った作品ではなく、冬から春へ移り変わる季節の一瞬を繊細にとらえた唱歌です。日本の自然と人の心を重ね合わせた情緒豊かな歌として、現在も世代を超えて親しまれています。
早春賦
うた
演奏
早春賦 作詞: 吉丸 一昌/作曲: 中田 章
1
春は名のみの 風の寒さや
谷の鶯 歌は思えど
時にあらずと 声も立てず
時にあらずと 声も立てず
2
氷解け去り 葦は角ぐむ
さては時ぞと 思うあやにく
今日もきのうも 雪の空
今日もきのうも 雪の空
3
春と聞かねば 知らでありしを
聞けばせかるる 胸の思いを
いかにせよとの この頃か
いかにせよとの この頃か
2番の「角(つの)ぐむ」 とは 草木の芽が角のように出はじめことで、特に葦(あし)・荻(おぎ)・薄(すすき)・真菰(まこも)などに使う言葉です。

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