「ローレライ」は、ドイツの詩人ハインリヒ・ハイネの詩に、フリードリヒ・ジルヒャーが曲をつけた歌曲をもとに、日本で広く親しまれるようになった唱歌です。日本では1909年(明治42年)に、近藤朔風の訳詞による「ローレライ」が『女声唱歌』に掲載され、発表されました。
原曲のドイツ語歌曲「Die Lorelei(ローレライ)」は、ハイネの詩とジルヒャーの旋律による作品で、1830年代に成立しました。ローレライとは、ドイツを流れるライン川沿いの岩山と、そこにまつわる伝説の女性の名前です。美しい歌声で船人を魅了し、船を難破させるという幻想的な物語が、歌の背景となっています。
近藤朔風による日本語の歌詞は、「なじかは知らねど心わびて」という印象的な言葉で始まります。夕暮れのライン川を眺めながら、昔から伝わる物語に心を惹かれていく情景が描かれ、続いて岩の上に立つ美しい女性ローレライの姿と、その不思議な歌声が登場します。
美しい歌声に魅せられた船人が、岩礁を見失い、舟もろとも波間に沈んでしまうという物語は、どこか恐ろしくも幻想的です。静かなライン川の風景と、ローレライの妖しく美しい姿が重なり、異国情緒豊かな作品となっています。
「ローレライ」は、日本では近藤朔風の格調高い訳詞とジルヒャーの親しみやすい旋律によって、外国歌曲でありながら日本の唱歌として長く愛されてきました。国立国会図書館の資料にも、近藤朔風の訳詞、ハイネ作詞、ジルヒャー作曲による「ローレライの歌」が記録されています。
遠いドイツのライン川を舞台にした「ローレライ」は、美しい自然、古い伝説、そして人を惑わせる歌声という幻想的な世界を一曲の中に描いた名曲です。日本語の歌詞を味わいながら聴くと、夕暮れのライン川と、岩の上で歌うローレライの姿が目に浮かぶような、独特の哀愁と美しさを感じることができます。
ローレライ
ローレライ
訳詞:近藤 朔風
作曲:Friedrich Silcher
1
なじかは知らねど 心わびて
昔の伝説(つたえ)は そぞろ身にしむ
寥(さび)しく暮れゆく ラインの流れ
入日に山々 あかく映ゆる
2
美わし少女(おとめ)の 巖(いわ)に立ちて
黄金の櫛(くし)とり 髪のみだれを
ときつつ口ずさむ 歌の声の
神怪(くす)しき魔力(ちから)に 魂(たま)もまよう
3
漕ぎゆく舟びと 歌に憧れ
岩根も見やらず 仰げばやがて
浪間(なみま)に沈むる ひとも舟も
神怪(くすし)き魔歌(まがうた) 歌うローレライ
神怪き(くすしき) ⇒ あやしき
そぞろ ⇒ 心がそちらに動いてゆくようす。気の落ち着かないようす。
巌頭(いわお) ⇒ 岩の上、岩の頂上

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