「雲」は、1912年(大正元年)に刊行された『尋常小学唱歌 第四学年用』に掲載された文部省唱歌です。作詞者・作曲者については明らかにされておらず、作者不詳の作品として知られています。
歌は「朝日に燃ゆれば もみの絹」と始まり、朝日に照らされた雲を美しい絹に、夕日に染まる雲を錦にたとえています。さらに、晴れた日の白い雲が、雨の前には墨で染めたような色へと変わっていく様子を描き、「変るぞ不思議 雲のいろ」と、空の表情の変化に驚きと興味を向けています。
二番では、雲が山の峰や波、動物、鳥の羽、魚のうろこのようにも見えることを歌い、三番では、遠い山や沖に静かに浮かんでいた雲が、やがて大空を渡り、海を越え、嵐を起こして雨を呼ぶという、雲のさまざまな姿と働きへと視野を広げています。
この歌の魅力は、身近な「雲」を題材にしながら、子どもたちに自然を観察する楽しさを伝えているところにあります。刻々と色や形を変える雲を眺め、その美しさだけでなく、天候の変化を知らせる存在としても捉えている点が印象的です。
雲(文部省唱歌)
雲 文部省唱歌
1
朝日に燃ゆれば もみの絹
夕日に映ゆれば 錦にて
晴れたる空の 白無垢は
雨降る前に 墨染と
変わるぞ不思議 雲のいろ
2
時には連なる 峯となり
時にはかさなる 波と見え
ある日は獣 鳥のはね
魚のうろこと 種種に
変わるぞ不思議 雲のさま
3
遥けき山の端 遠き沖
しずかに休むと 見る中に
大空わたり 海を越え
あらしを起こし 雨をよび
変わるぞ不思議 雲のわざ
もみ(紅絹)
緋紅色に染めた平絹。江戸時代には紅花染を紅染(もみぞめ),職人を紅師(もみし)といったことからこの名がついたとされる。
(出典元:世界大百科事典)

0 件のコメント:
コメントを投稿