故小妹

童謡・唱歌

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日本におけるこの曲はアメリカ合衆国で賛美歌、聖歌として歌われていた「Flee as a bird」に1890年、大和田建樹が「月みれば」の歌詞を付け「明治唱歌 第五集」で発表されたのが最初です。

その後1919年には「惟一倶楽部」名義の日本語詞による「故小妹」(こしょうまい)が発表され、この歌は喜波貞子や藤山一郎によって録音も行われています。

「故小妹」とは「故」は亡くなった、「小妹」は幼い妹を意味します。歌詞には、夜更けに鳴り響く鐘の音を聞きながら、遠い昔に別れた幼い姉妹の面影を思い出し、妹の形見である「若紫の小袖」を眺めて偲ぶ、という情景が描かれています。

この歌の大きな特徴は、同じ旋律が後に別の日本語歌詞でも歌われたことです。現在よく知られている「追憶」(古関吉雄が日本語詞をつけ、1939年に発表された唱歌)のメロディーも、このスペイン系の旋律をもとにしたものとされ、「故小妹」はその先駆けとなった日本語歌詞の一つでした。(追憶の歌詞は著作権保護期間中のため掲載していません)

また、「故小妹」は音楽だけでなく、竹久夢二との関わりでも知られています。夢二はこの歌曲の楽譜『セノオ楽譜』第139号の表紙絵として、「故小妹」を題材にした作品を描いています。そこには、亡き妹をしのび、形見の小袖を手にするという、この歌の世界観が表現されています。

「故小妹」は、華やかな童謡や唱歌とは趣を異にし、家族との別れや遠い記憶を静かに振り返る、しっとりとした作品です。鐘の音、夜の静けさ、そして形見の小袖という情景を通して、失われた人への深い愛情と追憶を描いた、近代日本の歌曲の一つといえるでしょう。

故小妹 


故小妹(こしょうまい)  
日本語詞:惟一倶楽部/スペイン民謡             

1   
更けゆく鐘の音 思いうつせみの
果(はか)なき面影 結びもあえず
忽(たちま)ち夢さめて とめし我が手に残しし
ゆかりの色濃き 若紫(わかむらさき)の
ああ ゆかりの小袖(こそで)

2   
思い出づれば 十年(ととせ)の昔
はるけき旅路に 我等(われら)残しし
幼き姉妹(はらから)の 夢の面影なれや
更けゆく鐘の音 昔を語る
 ああ ゆかりの小袖

歌詞の意味は「十年前に亡くなってしまった幼い妹が残していった着物を眺めながら偲んでいると、昔を語るかのように鐘の音が響いてくる」、といったところでしょうか。


月みれば  作詞:大和田 建樹

1   
霞(かすみ)にしづめる 月かげみれば
うきよをはなれて 心は空に
海原しづかに 波もなき夜を
松原ねむりて 風もなき夜半を
ああ めでてやそらに

2   
布ひく雲間に かかれるみれば
この世のにごりも 忘れて空に
萩ちる野末に しかのなく夜を
花咲く芦辺(あしべ)に かりのくる夜半を
 ああ めでてやそらに 

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