鎌 倉(文部省唱歌)

童謡・唱歌

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作詞:芳賀矢一(はが やいち)
作曲:不詳

「鎌倉」は、明治43年(1910年)に『尋常小学校読本唱歌』に掲載された文部省唱歌です。作詞は国文学者の芳賀矢一、作曲者は不詳とされています。

歌詞は、七里ヶ浜から稲村ヶ崎、極楽寺坂、長谷の大仏、鶴岡八幡宮、鎌倉宮、建長寺、円覚寺へと、鎌倉の名所旧跡をたどる構成になっています。同時に、新田義貞の鎌倉攻め、源頼朝や静御前、護良親王など、鎌倉にまつわる歴史にも触れています。そのため、単なる観光案内ではなく、古都鎌倉の歴史を旅するような内容の唱歌となっています。

特に冒頭の「七里ヶ浜の磯づたい、稲村ヶ崎」は、鎌倉の海岸風景と歴史を結びつけた印象的な場面です。また、鶴岡八幡宮の大銀杏や鎌倉宮、建長寺・円覚寺など、現在もよく知られている場所が登場するため、当時の子どもたちに鎌倉の歴史や文化を身近に感じさせる役割も果たしました。

歌の後半では、鎌倉の七百年に及ぶ歴史を振り返り、「興亡すべて夢に似て」と、栄枯盛衰のはかなさを歌っています。最後は古寺に吹く松風に、遠い昔の音が残っているようだと結び、歴史への郷愁と静かな哀感を漂わせています。

「鎌倉」は、鎌倉の美しい景観だけでなく、その土地に刻まれた歴史と人々の物語を歌にした作品です。明治期の唱歌が持っていた、子どもたちに日本の歴史や文化を伝える教材としての性格をよく示す一曲といえるでしょう。

 鎌 倉



鎌 倉   作詞:芳賀 矢一/作曲者 不詳

1 
七里ヶ浜の いそ伝い
稲村ケ崎 名将の
剣投ぜし 古戦場

2 
極楽寺坂 越え行けば
長谷観音の 堂近く
露坐の大仏 おわします

3 
由比の浜べを 右に見て
雪の下村 過行けば
八幡宮の 御社

4 
上るや石の きざはしの
左に高き 大銀杏
問わばや遠き 世々の跡

5 
若宮堂の 舞の袖
倭文のおだまき くりかえし
かえせし人を しのびつつ

6 
鎌倉宮に もうでては
尽きせぬ親王の みうらみに
悲憤の涙 わきぬべし

7 
歴史は長き 七百年
興亡すべて ゆめに似て
英雄墓は こけ蒸しぬ

8 
建長円覚 古寺の
山門高き 松風に
昔の音や こもるらん


4番 きざはし ⇒ 階段
5番 倭文(しず)⇒ カジノキや麻などを赤や青の色に染め、縞や乱れ模様を織り出した日本古代の織物

おだまき(苧環) ⇒ 麻糸を空洞の玉のように巻いたもの。

1910年(明治43年)「尋常小学読本唱歌」に掲載され、昭和8年度改訂の「新訂尋常小学読本唱歌」にて歌詞が一部変更されています。

3番 ※ 雪の下村 ⇒ 雪の下道
5番 ※ かえせし ⇒ かえしし

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