作詞:不詳(文部省唱歌)
作曲:不詳(文部省唱歌)
収録:『尋常小学唱歌 第四学年用』
「蚕(かいこ)」は、1912年(明治45年・大正元年)12月に発表された文部省唱歌です。『尋常小学唱歌 第四学年用』に収録され、当時の日本の産業と深く結びついていた養蚕を題材としています。作詞・作曲者については、個人名が明らかにされておらず、文部省唱歌(作者不詳)とされています。
歌の題材となっている蚕は、桑の葉を食べて成長し、やがて繭を作ります。その繭から生糸が生産されるため、養蚕は当時の日本にとって重要な産業でした。明治時代には生糸の輸出が盛んになり、養蚕は農家にとって大切な現金収入源でもありました。
「蚕」は、こうした時代背景を反映し、子どもたちに身近な蚕の成長や養蚕の仕事を通して、農業や産業の大切さを伝える教材として歌われたものと考えられます。
素朴で親しみやすい旋律に乗せて、身近な生き物である蚕を取り上げているところに、この時代の唱歌の特徴がよく表れています。単なる動物の歌ではなく、蚕を育て、繭を収穫し、生糸へとつなげていく人々の営みと、日本の産業を支えた養蚕文化を背景に持つ唱歌といえるでしょう。
なお、「蚕」は「かいこ」と読み、古くから日本の人々の暮らしと深く関わってきました。日本では明治時代に養蚕業が大きく発展し、1872年には群馬県に官営富岡製糸場が建設されています。
蚕 (かいこ)
蚕(かいこ) 文部省唱歌
1
風暖き 五月のはじめ
里の少女が 取るや羽箒
掃きおろしたる 春のかいこ
さながら黒き 塵の如く
2
四度の眠 いつしか過ぎて
箸の太さは 小指となりぬ
きそいきそいて 桑はむ音
木の葉に雨の そそぐ如く
3
髪も結ばず 夜さへ寝ねず
心つくして 一月あまり
努めしかいの 見えたる今日
うれしや繭は 山の如く
羽箒 ⇒ カモなどの鳥の羽を束ねて柄の先に取り付けた箒のことで、養蚕では種紙に付いてい る孵化したばかりの蚕を傷つけないように集める時に使う。
四度の眠り ⇒ 蚕は繭を作るまでに四回脱皮をするので、それを表している。
3番にあるように髪を結ぶどころか、夜も寝ないで一ヶ月もの間付きっきりで世話をしなくてはならない、と歌われるほど大変な作業だったようです。
数年前に世界遺産の富岡製糸場に行く機会がありました。その蚕の繭から絹糸を作る工場だった所ですね、よくぞあれだけの施設と機械が保存されていたものだと驚きました。

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