作詞:林 古渓(はやし こけい)
作曲:弘田 龍太郎(ひろた りゅうたろう)
作曲年:1912年(明治45年)
「昼」は、詩人・林古渓の詩に、作曲家・弘田龍太郎が曲を付けた日本歌曲です。林古渓は、のちに成田為三が作曲した「浜辺の歌」の作詞者としても知られています。
この作品は、春の野へ出かけた一人の人物が、自然の中で心を休める様子を描いています。「歌につかれ 文に倦みて」という冒頭から、日々の生活や読書から少し離れ、春の野に身を置く情景が浮かびます。小川の根芹を押し分けて泳ぐ小鮒、霞んだ空を飛びながら鳴く雲雀、土筆や菫といった春の草花など、細やかな自然の描写が印象的です。
詩の後半では、春の野の静けさの中で、自然と一体になるように身体を休める姿が描かれます。都会的な生活から離れ、春の自然に身をゆだねることで、疲れた心を癒やしていくような趣があります。
弘田龍太郎は、東京音楽学校(現在の東京藝術大学)在学中に「昼」を作曲したとされます。研究資料では、1912年(明治45年)7月16日に作曲された記録があり、弘田の初期の歌曲作品として位置づけられています。
歌詞は林古渓の詩「春聲」に関連する作品で、後に「暁」「朝」「夜」とともに四部曲「春声」としてまとめられました。ただし、「昼」以外の3曲は1927年(昭和2年)に作曲されたとする資料があり、「昼」はそれらに先立って作られた作品と考えられています。
弘田龍太郎といえば、「叱られて」「浜千鳥」「春よ来い」など、親しみやすい童謡・歌曲の作曲家として知られています。
昼
昼 作詞:林 古渓/作曲:弘田 龍太郎
1
歌につかれ 文(ふみ)に倦(う)みて
携え行くや 春の野
小川の根芹(ねぜり) おしわけにぐる
小鮒の腹 白く光る
2
霞む空に 名乗る雲雀
しばしは憩え 堤に
つくしは誇り 菫うつぶす
小草しきて 汝も臥せや

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