作詞:北原白秋(1885~1942)
作曲:中山晋平(1887~1952)
発表:1919年(大正8年)

「花園の恋」は、詩人・北原白秋が作詞、中山晋平が作曲した大正時代の流行歌です。1919年(大正8年)に発表され、楽譜の初版は同年8月10日に刊行されました。後に「新作小唄」の第8編として出版されています。

この歌は、ビゼーの歌劇『カルメン』に関連する劇中歌として作られ、北原白秋は『カルメン』の舞台に合わせて、「花園の恋」をはじめ「酒場の唄」「煙草のめのめ」「恋の鳥」「別れの唄」などの歌詞を書き、中山晋平が曲を付けました。

当時、松井須磨子が出演する舞台で歌われたことでも知られています。松井須磨子が亡くなった後も、これらの劇中歌はレコードなどを通して広まり、大正時代の流行歌として親しまれました。『花園の恋』も1919年10月、中山歌子の歌でレコード化されています。

歌の内容は、花うばらの咲く場所で、二人の男女が人目を忍んで逢い、寄り添い、互いを見つめ、やがて口づけを交わすまでの恋を描いたものです。「くるしき恋」「かなしき恋」という言葉が繰り返され、恋の喜びだけではなく、禁じられたような恋におびえる二人の心が印象的に表現されています。

特に歌詞の中で何度も登場する「震えて」という表現は、この作品の重要な特徴です。恋する喜びと同時に、相手を求める不安や、人に知られることへの恐れが入り混じり、二人の感情が次第に高まっていく様子が伝わってきます。

白秋らしい美しい言葉と、中山晋平の親しみやすい旋律が結びついた「花園の恋」は、単なる恋愛歌ではなく、大正時代の新しい大衆文化を象徴する一曲でもあります。西洋の名作「カルメン」を背景にしながら、日本的な詩情と当時の流行歌の感覚を融合させたところに、この作品の魅力があります。

花園の恋



花園の恋    
作詞:北原白秋/作曲:中山晋平

1   
くるしき恋よ 花うばら
かなしき恋よ 花うばら
二人は逢いぬ しのびかに
震えて人目 はばかりぬ

2   
くるしき恋よ 花うばら
かなしき恋よ 花うばら
二人は寄りぬ 今更に
震えて眼をば 見合せぬ

3   
くるしき恋よ 花うばら
かなしき恋よ 花うばら
二人は泣きぬ たえだえに
震えて熱く 息づきぬ

4   
くるしき恋よ 花うばら
かなしき恋よ 花うばら
二人は触れぬ おそろしく
震えて紅く 口吻(くちづ)けぬ

作曲の中山晋平と芸術座について

芸術座を旗揚げした「島村抱月」の書生だったことから、芸術座に参加し数々の劇中歌を作曲しています。その中でも特に「カチューシャの唄」は有名です。他にも多くの童謡や校歌、歌謡曲を作曲するなど日本を代表する作曲家の一人です。

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