作詞:作者不詳
作曲:作者不詳
発表年:明治43年(1910年)
「母の心」は、明治43年(1910年)に文部省が刊行した『尋常小学読本唱歌』に収録された文部省唱歌です。後に『尋常小学唱歌』や、昭和7年(1932年)の『新訂尋常小学唱歌』第二学年用にも収録されました。昭和7年版では第26曲として掲載されています。
歌は、朝早くから井戸端で洗濯をする母と、夜遅くまで針仕事をする母の姿を描いています。子どもの運動会で汚れた袴を洗い、娘の雛祭りの晴れ着を仕立てるという具体的な場面を通して、家族のために働く母親の愛情と献身が表現されています。
当時の家庭生活では、洗濯や裁縫などを母親が担うことが一般的であり、この歌にもそうした明治期の生活風景が反映されています。「着せてやりたいこの晴着」という言葉には、子どもの成長や喜びを願う母親の温かな心情がよく表れています。
なお、『母の心』の作詞者・作曲者については、現在確認できる資料では個人名が明記されておらず、文部省唱歌として匿名で扱われています。文部省唱歌は、複数の編纂委員による合議で歌詞や曲が決定されたため、個人の作者名を付さない形で発表されたものが多くありました。
「母の心」は、明治時代の家庭の風景と、子どもを思って働く母親の愛情を素朴に描いた唱歌として、当時の生活文化を知るうえでも興味深い一曲です。
母の心 (文部省唱歌)
母の心 文部省唱歌
1
朝早くから 井戸ばたで
母はせいだす 洗い物
たらいの中に あるは何
これは太郎の 小倉の袴
太郎昨日は 運動会で
泥によごした この袴
2
夜遅くまで 奥の間に
母はせい出す 針仕事
ひざの上には 何がある
これはお春の 晴着の羽織
お春明日は 雛様祭
着せてやりたい この晴着
小倉の袴=小倉織で仕立てた袴で、学生の袴として用いられた。

0 件のコメント:
コメントを投稿