作詞・作曲:文部省唱歌(作詞者・作曲者ともに不詳)
発表年:1912年(大正元年)
掲載:『尋常小学唱歌 第四学年用』
「藤の花」は、1912年(大正元年)に発行された『尋常小学唱歌 第四学年用』に収録された文部省唱歌です。作詞者・作曲者はともに明らかになっておらず、文部省唱歌として伝えられています。
この歌の大きな特徴は、江戸時代の俳人・「市原多代女(水嵩に車はげしや藤の花)」と「宮崎荊口(藪畠や穂麥にとゞく藤の花)」の俳句が歌詞の中に取り入れられていることです。
「野山もかすむ春雨の」という美しい情景から始まり、春雨が上がった後、水かさを増した川のほとりで、藤の花が水しぶきに濡れながら日に映える様子を描いています。続く二番では、夕空に雲雀の声が消えていく中、藪や穂麦のあたりに咲く藤の花が静かに揺れ、日が暮れていく情景が歌われます。
華やかな藤の花だけを歌うのではなく、雨、水しぶき、雲雀、穂麦、夕空、夕暮れといった自然の移ろいを一つの歌の中に描いた「藤の花」。大正期の唱歌らしい、落ち着いた情緒と日本的な季節感を味わえる作品です。
藤の花
藤の花 文部省唱歌
1
野山もかすむ 春雨の
晴れて なごりの
「水嵩(みずかさ)に 車はげしや藤の花」
しぶきに濡れて 日は映ゆる
2
雲雀の声は 夕空に
消えて此方(こなた)の
「薮畠(やぶはた)や 穂麦にとどく藤の花」
しずかに揺れて 日は暮るる

0 件のコメント:
コメントを投稿