作詞:長谷川伸
作曲:奥山貞吉
発表:昭和4年(1929年)
「沓掛小唄」は、作家・劇作家として知られる長谷川伸が作詞し、作曲家の奥山貞吉が曲をつけた歌謡曲です。昭和4年(1929年)に、日活映画『沓掛時次郎』の主題歌として発表されました。映画では川崎豊と曽我直子が歌い、帝国ホテル・オーケストラの演奏によるレコードも発売されています。
題材となった「沓掛時次郎」は、長谷川伸が昭和3年(1928年)に発表した戯曲で、股旅もの(旅をしながら生きる渡世人を主人公とする物語)の代表的な作品です。主人公の沓掛時次郎は、義理と人情の間で苦悩する渡世人として描かれています。
歌詞には、「渡り鳥かよ 旅人ぐらし」という旅暮らしの孤独や、「人情からめば 弱くなる」という、強く生きようとする男が人情に心を動かされる姿が表現されています。これは、長谷川伸が描いた股旅ものの世界観を、そのまま歌にしたものといえるでしょう。
また、浅間山を背景にした「浅間三筋の煙の下で」という印象的な情景も登場し、信州・沓掛を舞台とする物語の雰囲気を強く伝えています。
「沓掛小唄」は、単なる映画主題歌にとどまらず、義理、意地、人情、そして旅人の哀愁を凝縮した昭和初期の流行歌として親しまれました。後年には村田英雄や舟木一夫らによっても歌われ、長く歌い継がれています。
この歌の歌詞は五番までありますが、レコードでは2番が省かれています。尚、川崎豊と曾我直子は当時のコロムビアの主力歌手として活動しており、コンビでの歌では「蒲田行進曲」が有名です。
沓掛小唄
沓掛小唄 作詞:作曲/長谷川伸:奥山貞吉
1
意地の筋金 度胸のよさも
人情からめば 涙ぐせ
渡り鳥かよ 旅人ぐらし
あれは 沓掛時次郎
2
背伸びしたとて 見えぬを知りつ
せずにいられず また背伸び
生まれ故郷は はるかな空よ
思うお方も 百里先
3
来るか時節が 時節は来ずに
今朝も脱け毛が 数を増す
今度の浮世は 男でおいで
女とかくに 苦労がち
4
月よもの言え 姿をうつせ
ただ照るばかりじゃ 罪つくり
泣いた別れは 忘れも出来よ
なまじ泣かぬが 命とり
5
千両万両に まげない意地も
人情からめば 弱くなる
浅間三筋の 煙の下で
男 沓掛時次郎

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